ノイバウアーの"名演技"
フォン・ブラウヒッチュ(同名のドイツ陸軍最高司令官の甥)とルーディ・カラッチオラは一度だけ制服をあつらえました。
いざ着ようとすると、メルセデス・ベンツ・チームの名物監督アルフレート・ノイバウアーがあまりにも巧みにからかって周囲の人々を笑わせたため、2人ともそんな目にあうくらいなら永久に制服など着るものかと決心しました。
あるときヒトラーは、例の大演説の中でこう言いました。
「怖れを知らないレーシング・ドライバーたちはスポーツを愛するためでなく、ドイツの名誉のためにその生命を危険にさらしているのだ」。
これまた彼の大きな勘違いの好例です。
ドライバーたちは、スポーツを愛する国際人であり自由人でした。
ノイバウアーは、ドライバーたちと酒をのむと、"直属上官"であるヒューンラインのもったいぶったしぐさをみごとに真似して見せたそうです。
中古車情報をチェックするくらい車好きの人なら、彼の名前はきっと聞いたことがあるはずです。
やんやの喝采に気をよくした彼はさらにアルコールのいきおいで、今度はドイツ国民に向けて一大演説をぶつヒトラーの真似まではじめました。
ドライバーのなかには床をころげまわって笑いが止らないものもいました。
独裁者とモーター・スポーツとは、本質的に相いれないものだったのかもしれません。